『君の名は。』
僕は確信した。
エンドロールが流れる時間は、溢れた涙を乾かす時間なのだと。
もちろん、全ての映画が観客の涙を誘うわけではないし、そうであって欲しくもない。
だが、『君の名は。』のエンドロール中、それが個別的なものであったとしても、また一時的なものでさえあったとしても、僕の中にその時においては絶対的なこの確信が生まれたのだ。
涙を乾かして映画館を出ると、平然とした僕が歩いている。
彼は何も変わっていないように見える。
しかし彼の心、思想、考え方、世界の見え方には劇的な変化が起こっている。
黄昏時にNTTビルを見つめる彼は今まで通りの彼ではないし、彼の目に映る世界もまた、今まで通りの世界ではない。
それほどの影響を、この映画は与えた。
そんな映画こそ、良い映画であるための「十分条件」である。